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2007年5月30日 (水)

緊急医師確保対策案

キーワード
医師不足、医療崩壊、僻地医療、へき地医療、医師確保

選挙前の人気取り。所詮は付け焼き刃、泥縄式の案。選挙が終わるとどうでもよくなり、役に立たない制度だけが後に残る。

医療に対する公的支出の絶対的不足と医師をはじめとするマンパワーの絶対的不足。これらを解決せずして医師確保とは、現在の医師の労働強化以外の何ものでもない対策案である。

骨太の方針、医療制度改革大綱では医療費削減が至上命題である。
» 医療崩壊の元凶資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2007/05/post_9738.html

医師確保とは、あるところから別のところへものを移動させて確保する意味合いであって、新たに生み出す、作り出すものではない。医師不足と言いつつ、医師数は足りていて偏在しているという建前は崩していない。医学部定員の地域枠だの前倒し増員だの、実際の政策がその証拠だ。

確保という言葉自体が不適切だ。犯人の身柄確保か ? 物資の確保か ? 人は確保とは言わないだろ、普通。

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国立病院や規模の大きな民間病院などに派遣機能を担わせ、国が都道府県からの求めに応じて各地の自治体病院などに派遣するという。前にも触れた、医師の勤務地を強制できる権限を知事に持たせる方向だ。
» 医療崩壊の元凶 http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2007/03/post_a86b_1.html

そういう大きな病院では、医師数は充足しているのか ? 労働基準法に反せずに、労働衛生、労働安全が行き届いているのか ? そんな病院が日本にあっただろうか。

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院内保育所の整備や、復職のための研修を実施する病院を支援するともいっている。これに必要な保育所は 24 時間病児保育のはずだし、そこには小児科医が必要。研修するなら指導医が必要。一人の女性医師を復職させるだけの費用とマンパワーはどこから ?

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勤務医の過重労働の緩和策として交代勤務制などを徹底させるという。一人の医師が日夜働いているのを 3 交代制にするだけで、何倍の医師数が必要か、計算できないのだろうか。次のところで人員数の計算例をお示しくださっている。
» 新小児科医のつぶやき - 目一杯のエールを贈ります http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070407

また、医療機能評価機構では主治医制であることを求めていることにも矛盾する。

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医師、看護師、助産師、医療補助者らの業務分担を見直す仕組みを検討するというが、クラーク、セクレタリー、ディクテーターなどを新たに配置する人件費のことを考えているのだろうか。業務分担を見直すだけで現在の業務量を現在の人員でこなすことは、すでに限界である。

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研修医が集中する大都市圏の定員を減らし若手医師を地方に誘導するとは、地方の研修医を増やすには地方にそれだけ指導医が必要、若手医師を地方に回すと都市部の若手医師が不足する。

どうあっても医師数の絶対的不足とは言わないようだ。

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逃散 / 心の僻地でも一度引用したが、無医地区問題と医療費についての歴史の意見は刮目に値する。もう一度参照する。

----- 以下引用 -----

無医地区の、無医地区たる理由は、診療所の個人経営が成り立たない地域だからでは無く、医師の子弟の教育が困難なわけでも有りません。 そこの地域住民が悪い、殊に、自分が有力者だと思い込んでいる首長、議員、町内会長、大地主、資産家等が、馬鹿な要求や他所者扱いや三流医師扱いをするから、医師が嫌がって地区を出て行くだけの事なのです。 本質的には、その地区出身の若者がいなくなるのと全く同じ理由なのです。

----- 以上引用 -----

費用とマンパワーの絶対的不足に何ら言及しないこの案は、画餅である。所詮人気取りの選挙対策である。選挙後には、医師の労働力を搾取してそれを原資にする制度だけが残るだろう。それが元々の骨太の方針なのだ。

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しかし、最近、私はある疑問に頭を悩ませている。医療費を増やし、医師を増やす国策が採られたとして、日本の医療はよくなるだろうか。日本人は安い医療を使い捨てにしかしないのではないだろうか。いくら安く大量によいものを供給しても満足されることはないのではないか。

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参考資料

緊急医師確保対策案資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2007/05/post_1b97.html

道標主人 | 2007-05-30 23:42 | 医療、社会保障, 医療崩壊, 経済・政治・国際 | | コメント (2) | トラックバック (0) | Top

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コメント

Kobayashi Y, Takaki H. Geographic distribution of physicians in Japan. Lancet 1992;340:1391-1393.
新設医大の設立で医学部の新卒が4000人から8000人の増加したが、その国内分布(1980から90年)を市町村(3268)ごとに解析。
(結果)
①医師数は37%増加し、10万人あたりの医師数も127から165人となった。
②市町村ごとの医師数のジニ係数を求めると、80年が0.331で90年が0.340で改善はない。
③人口3万人以上の市町村は医師数が増えたが、1万人未満の町村では増加はほとんどない。
④80年と90年とで10万人あたりの医師数の変化のメディアンは、
<5000人の自治体では4.7、
5000-10000人の自治体では5.7、
10000-30000人の自治体では15.9、
3-5万人の自治体では29.4、
5-10万人の自治体では30.2、
10-30万人の自治体では34.0、3
0万人以上の自治体では25.2
と3万人以上と以下で増え方に違いあり。
⑤僻地義務化や金銭的な誘導は無理。

漆博雄。わが国における医師の地域分布について。季刊社会保障研究 1986;22:51-63.
①昭和38年以降、医学校の定員は増えている。
②しかし、定員が増えても開業医は横ばいで、勤務医、特に医育機関の医師が増えている。
③各県の10万人あたりの医育機関の勤務医は新設医大のために偏在化は改善。
④しかし、開業医、勤務医は偏在化が進んでいる。特に、大都市、市部、町村部の間の10万人あたりの医師数は偏在化が進む。
⑤僻地は公的病院が医療を行っているが、独立採算のため、僻地に病院が新設されず、医師が増えても、僻地の医療は改善しない。

投稿 江原朗 | 2007/06/04 18:01:30

江原先生
いつも貴重な資料をお示しくださいまして、有り難うございます。

これらが 15 年前、20 年前のもので、現在も医師数は、へき地での必要数を満たすに及ばず、地方の医療機関は増えるどころか減り、都市部ですら足りないということですね。

投稿 道標主人 | 2007/06/04 23:08:46

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