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2007年3月22日 (木)

医療崩壊の元凶

キーワード
医療崩壊、心の僻地、医療費亡国論、医療費抑制政策、医療費削減、医師不足、医師過剰、医療費増大、医師叩き、医師バッシング

2007 年 3 月。将来、この年月と医療をキーワードにしてブログを検索すれば、日本の国民皆保険制度による医療が崩壊していくまっただ中の様子を顧みることができるだろう。

私はつい最近まで、医療は公共財であり、社会保障である、日本の国の内部のセーフティネットであると考え、それを維持することを主眼に、医療を自由主義経済のサービス産業にしたいと考えている勢力を批判して来た。

しかし日本は、米国経済界の意向をくんだ政治をしていかざるを得ない立場らしい。これについては、政権が代わっても大きな流れは一定の方向を向いているようだ。医療政策において、この流れの萌芽をみることができるのは、橋本内閣の頃だろうか。

それは医療の公的部分、社会主義統制経済を縮小して、営利部分、自由主義経済の医療産業を拡大したいという流れである。株式会社病院などは、その流れの一部にしか過ぎず、本流は米国保険金融財閥による日本の医療保険の掌握なのだ。規制改革と称して自己の会社への利益誘導に余念がなかったオリックス宮内氏。オリックスは米国資本の傘下にあると言ってよい。
» 保険会社の正体
» 心ある人 3
» 自由主義医療経済
» 国民皆保険 7

この流れ、歴史の歯車を逆に回そうとする者は滅びる。社会保障としての日本の医療、世界に誇れる日本の医療とそれを支えて来た私たち医師 ( ここでは主に保険医 ) は、滅び行くのだろうか。

昨年来、マスコミ報道に出てくるようになった四文字、「医療崩壊」。これは歴史の必然なのだ。今は 2007 年 3 月、医療崩壊はそのまっただ中と言ってよい。産科は崩壊した。僻地、小児、救急医療はもうすぐ崩壊し、次は循環器などの内科、外科と言われている。整形外科ですら、しかも都市部ででも崩壊が始まっている。
( 医療崩壊という語の初出はいつだろうか。保坂正康氏の 2001 年の著書に「医療崩壊」というのがある。 )

この医療崩壊は社会主義統制経済を財政的に締め付けて起こったという要因が大きく、いわばイギリス型崩壊と呼んでよいだろう。財政的に困窮し、医師の動機が失われた。イギリスではブレア政権の 2000 年以降、医療費国家支出を 1.5 倍に増額したものの、崩壊したままである。
» イギリスの医療の一例

日本はどうなるだろうか。私は今、ここに考えが移っている。おそらく、米国保険金融財閥による医療経済の再編として、米国型医療への道を歩みだすだろう。多くの平均的なレベルの医療が、悪化したアクセスの元で保険診療として残り、いい医療は自由主義経済でとなるだろう。

ところが米国では医療費の国庫支出も、経済界の医療費負担も増大し、次期大統領選挙の最大の争点が、イラク問題と並んで医療制度だという。米国では、4,700 万人ともいわれる人たちが医療保険に入れず、個人の破産の最多の原因が医療費の支払いのためだという。米国の医療も、一部の金持ちのためのもの以外は崩壊しているのだ。米国の先例に倣い、自由主義経済の医療になってもいずれ崩壊する。これをアメリカ型崩壊と呼んでよいだろう。

現在のイギリス型崩壊は、次にアメリカ型崩壊となる。その先までは今は見通せない。次の数年間の米国がモデルになるか、あるいは、北欧型の医療制度になって再生するか。日本国民は、自らそれへの流れを決定できるだろうか。

その国民の決断が数年後になされるかも知れない。そのときに、今日までのことを思い出し、判断の助けとするために、以下のことを書き記しておく。医療崩壊の元凶からその流れを見ておくものである。医師は、ここまで努力し、日本の社会保障としての医療の行く末を案じ、提言を行ってきたことの記録でもある。

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1. 財源問題

1983 年、医療費抑制政策の象徴ともいえる厚生省吉村仁保険局長 ( 当時、後に事務次官 ) による医療費亡国論が世に出た。これが次に触れるように、連綿と今も続いている。
» 逆風 / 医療費亡国論

1995 年、村山内閣の時、武村正義大蔵大臣が財政危機宣言を行い、大蔵省は財政構造改革と呼ばれる財政再建路線をとりはじめた ( このとき、消費税率が 3% から 5% に引き上げられることが決まり、橋本内閣で実行された )。この流れの先、1997 年第 140 回国会での医療保険改革法案の成立は、橋本龍太郎総理大臣が、自身で六つの改革と呼んだ中で、これも橋本首相が自ら社会保障構造改革と称して行ったものである ( 第一は行政改革、第二は財政構造改革、第三は持株会社の解禁や需給を理由とした参入規制の撤廃等の規制緩和を含む経済構造改革、第四に金融システム改革、第五に国民皆保険の下で、医療、年金、介護等多岐の分野にわたって行う社会保障構造改革、第六に国民一人一人の個性や創造性を尊重するべく行う教育改革の六つ )。これの実態は、医療費の自己負担の増大 ( 社会保険本人の窓口負担の 1 割負担を 2 割に ) による公的負担の縮小であった。

そして 2002 年、小泉内閣で史上初めて、健康保険診療報酬の本体部分が引き下げられた ( 2006 年に再度引き下げられた )。

コスト、アクセス、クォリティの三つを奇跡的に実現していた日本の医療は、医療関係者の献身的な努力で持ちこたえていたが、ここコストカットに至って崩壊に向けて、目に見えて崩れ始めた。
» 国民皆保険

2. マンパワーの配置の問題

日本の人口当たりの医師数は先進国中で少ない方に入る。それを医局講座制による医師の派遣 ( 医局人事 ) という方法で、僻地医療、救急医療などに回していた。医学部教授の権力の源であった医局人事は、徒弟制度と批判され、名義貸し問題など不透明な金の流れを問題視され始め、社会の要請により消え行く運命となった。

2003 年、はじめて弘前大学医学部で医局制度が廃止された。社会はこれを歓迎したが、その結果待っていたものは僻地医療などでの医師のマンパワーの枯渇であった。
» 弘前大学資料

同時に 2004 年、新臨床研修制度ができ、医局が医師の人事に関与する力は大きく削がれてしまった。これも、医師は何でも診れるべきとの社会の要請により、何でも診れる医師を 2 年間の初期研修で養成しようという、医師が見れば無謀な要求に応えたものなのだ。社会は歓迎したが、結果は2006 年、新臨床研修を終了した医師が、各診療科に分かれて進み、後期研修を行う段になって、小児科、産婦人科、救急、麻酔などの診療科ごとでの医師のマンパワーの枯渇として表出した。

元々少ない医師数という崩壊因子が新研修制度によって増悪した、崩壊の萌芽が加速したという様子である。

医局講座制の廃止も、新臨床研修制度も、それらが議論されはじめたとき、医師たちは、今日の医師不足問題を予言した。僻地医療と救急医療での医師不足、それと就労条件の悪い診療科ほど医師がいなくなる事態が起こるだろうと。

小児科がなければ、麻酔科がなければ産科はリスクのある出産を扱えない。この例のごとく、一診療科の崩壊は、他の診療科の崩壊を引き起こす。

マンパワーの不足は、医療資源の集約化で対処しようという動きになったが、集約化は、集約化された医療機関での医師の疲弊と離職を招き、集約化した先が崩壊するというドミノ倒し現象に結実した。これは、2006 年後半から 2007 年初頭より兵庫県の北部で観察されたものが、その最初の好例として挙げられるが、小規模なドミノ倒し現象は、既に、そして現在も全国で起こっている。

政府は安倍総理自ら、厚生労働省をはじめ、自治体病院の組織などでも、医師の僻地勤務の強制を主張し始め、この 3 月 14 日、日医も平成 18 年度地域医療対策委員会中間報告書で医師の僻地勤務義務化を言い出すようになった。医療制度上は、医療法改正を経て、医師の人事は都道府県が管掌することになる。知事が医師の僻地派遣を決定し実行できるようになる路線がひかれている。

こうなると、医師免許を得た者が医療の職に就こうと思わなくなることにまで考えが及ぶ。鎖で繋ごうとすると、逃げる者は増えるのだ。ここで、大切なことを思い起こして頂きたい。医師が困難な職務を全うする動機は何だろうか。金や名誉という要素は少ない。患者さんに感謝されること、自己の能力が向上すること、この二つが最も大きいのではないだろうか。僻地勤務は、果たして医師の能力を向上させられるか。かつては僻地にもいた指導医クラスの医師は、今や少なくなってしまった。

次の項目では、患者さん、ひいては国民の医師に対する気持ちに触れる。

3. 医師叩き

医師叩きのポイントは次のようなものだ。いずれも官僚やマスコミが言い出し広めている。国策として、医師へのネガティブキャンペーンが張られている。


  • 医療費亡国論

  • 医師は高給

  • 一人の医師の養成には 1 億円という多額の国費が使われている

  • 診療報酬の不正請求が年間 9 兆円

  • 医師優遇税制

  • 日本の医師の技量は拙劣

  • 医師は世間知らず

  • 医師は人間性に乏しい

  • 医師は赤ひげ、ヒポクラテスを忘れている

  • 医師の隠蔽体質

  • 医師の庇い合い

  • 医師過剰 ( これは過剰なんだから低廉な賃金で働けという考え方につながる )

  • .....


まだあるだろうか。

これらがいつ頃からマスコミで広まったのかは定かではないが、医療費亡国論は 1983 年、医師過剰は 1984 年の厚生白書に見られる。医師養成に多額の国費という文句は 1985 年の厚生白書に見られるし、その後様々な政府文書に出てくる。最近では医師不足に対して医師養成を増やさない方便として、医師の需給に関する検討会で厚生労働省側が主張している。保坂正康氏の 20 年ほど前からの一連の医療関係の著作でもこれについて触れられていて、1 億円という数字は氏の著作中にあるという。最近では 2001 年の「医学部残酷物語」でも触れられているとのことである。
» 逆風 / 医療費亡国論
» 逆風 / 医師の過不足 2
» 逃散 / 赤ひげの呪縛
» 国民皆保険 / 不正
» 逆風 / 医師養成にかかる費用

1980 年代前半に、医療費削減と医師数抑制という医療政策の転換点があった。これと同時に旧厚生省、現厚生労働省は、少しずつ、医師へのネガティブキャンペーンをマスコミに張らせたのだろう。今でもそうだ。マスコミもステータスを叩くことの快感に酔っていたし、今も酔っているのだろう。テレビなら視聴率、雑誌なら販売部数が伸びるのである。ちょっとした医師叩きのネタをマスコミに流せば、後は勝手にやってくれる。政府を何かと批判するマスコミが、こと医師叩きに関しては、政府と同じスタンスである。

これは、トックビルの名言として小松秀樹虎ノ門病院泌尿器科部長がその著書でフランスの貴族の例で触れているように、マスコミが叩いたから医師が落ちぶれたのではない。落ちぶれて国民の足下に転がったから叩かれたのだ。
» トックビルの名言

もともと医療は贅沢品であった。国民皆保険という社会主義制度の下、贅沢品であった医療は、社会資本として整備され、国民に等しく配給される日用品になった。大衆みんなが手にするようになると、ゴミ同然に扱われる。さらに便利さを追求すると、それは医療機関のコンビニ化である。安くてすぐに手に入ることは無駄遣いになる。小児の夜間救急、救急車のタクシー代わりの利用などにその好例を見ることができる。医療は安物の日用品になってしまった。雲の上のものは叩けないが、自分と同じ地面の上にいる相手、無駄遣いを許される相手なら、人間の心理としては、ちょっとでも満足ができないことがあれば、容易に叩きにかかるだろう。このようにして、落ちぶれたから叩かれるのだ。

日本の公的資格による職業で、教師という先例がある。昔は怖くて権威のあった教師が、いまや父兄からは連日怒鳴り込まれ、生徒には馬鹿にされて暴力まで振るわれる。ベテラン新米に関係ないようだ。むしろベテランほどこの時代の変化に適応できず、心を病んでしまうという。教師はデモシカになってしまった。

新聞の投書欄には、意図的かどうかは分からないが、医師を批判する投書がしょっちゅう載っているし、週刊誌は、毎週のように叩いてくれている。ここ数年流行が拡大しているブログ ( ここもブログだが ) では、露骨な表現で悪意むき出しの記述を数多く見ることができる。

そういう人々の心理は、しかし、医師の眼前で表出することは、実社会では少ない。まだ日本人は節度があるというか、建前と本音なのだろう。もしその本音を聞くことができたなら、どうだろう。次の日から、患者さんに対して、それまでと同じ真摯な態度を取ることができるだろうか。

以下、元検弁護士のつぶやき勤務医不足深刻というエントリからの、ある医師のコメントを紹介する。

---------- 以下引用 ----------

» http://www.yabelab.net/blog/2007/03/20-101655.php#c45481

訴訟リスクの高い科の20年目医師です。内科系ですが救急中心の医療に従事しています。
最近病気をして患者さんになりました。
そこで、名著「医師が患者になったとき」のように、患者の目線で医療を見直すチャンスと思い、よく観察し、勉強しようと思いました。
それなりに重病でいろいろ経験しましたが、もっとも大きな経験は違うものでした。
患者になって見えたもの。それは医療者に対する患者さんたちの発言、態度があまりに目に余るということでした。医師に対する批判、看護師に対する批判、病院に対する批判等々、少しは医療者側にも反省すべきこともあるかと公平に考えようとしましたが、公平に考えるほど怒りはわき上がりました。医師の立場では決して聞こえなかった声を聞きましたが、それらは、本当に自分たちの身勝手、医療者が患者様に使えて当然との思想、お金払っているお客様気取り、等々。 まったく一患者になっても納得できませんでした。医療者の善意はまったく伝わっていません。病人に親切にしてくれる医療者をまったく馬鹿にしており、無理の言いたい放題でした。日本人は病院はダダをこねても怒られない場所と理解しているのでしょうか。
病気が治ったらまた現場にでるつもりでしたが、これをみてしまったらもう無理。もちろん、いろいろな人々がおられ、こんな人ばかりではないと思います。 でも私には人の善意を期待できなくなってしまったのです。
結局私が患者になって体験したのは、「患者の心なさで医師の使命感が折れるとき」でした。
こうして医師が減ってゆくのです。

---------- 以上引用 ----------

医師の心を折る行為は、実は日常茶飯事だ。特に救急医療、夜間時間外医療の場で高頻度に発生する。産科医療では最もそれが顕著だという。医療従事者は、低廉な費用と劣悪な環境下で、善意で耐えているのだが、人間の心に蓄えられている善意、忍耐は無限ではない。権利のはき違えの上に、医療従事者の善意と忍耐は無限であるとまで勘違いしているのだろう。特に医師は批判攻撃の矢面に立たされる。過酷な医療労働の現場から医師が逃げ出すのは、待遇、労働環境だけの問題ではない。その心を折っているもの、それがまた人の心なのだ。それを心の僻地という。
» 逃散 19
» 病める者の権利
» 逃散 / 心の僻地

医師が頑張れば頑張るほど、医師の地位が下がり叩かれる。医師は少しずつ現場を立ち去る。残された者の負担は増える。またそれで立ち去る。立ち去りもまた、ドミノ倒し現象となっている。

4. 判決に基づく医療

1 - 2 年前頃から、judgement based medicine ( JBM ) という語を目にするようになった。医師は自然科学の法則に従順であり、社会制度と自然科学の法則との間に乖離、矛盾がある時は、自然科学の法則に従うことが多いだろう。薬の適用外使用など、その最もありふれた例である。少し違うが薬の添付文書に沿わない使用をした場合、最高裁判決で否とされたものがある ( ジブカイン訴訟、最高裁 1996 年 1 月 13 日判決 )。
» 新小児科医のつぶやき
» WikiJBM
» 元検弁護士のつぶやき
» 添付文書に従わない薬の投与は“医療慣行”( Nikkei Medical ONLINE 2006.5.2 )

それなのに、医学は自然科学の数多い分野の中で、不確実性が高いものである。患者さん一人ひとりが皆違う。結果がいつどうなるか、不確実性が高い上、ただ一つ確実なことは、人の死である。現実社会では、自然科学の現象の結果、人々は幸福にも不幸にもなり、死ぬこともある。様々な利害、遺恨、お金と心の問題が生じる。社会制度の方から、その自然科学の不確実性、社会制度との乖離を突いて、自然科学の現象の結果として起こった問題を社会制度で解決しようとする事態となる。

それが裁判である。民事であれ、刑事であれ。昨今、医師の医療行為での刑事訴追が加速する流れとなった。割箸事件、慈恵医大腹腔鏡事件、慈恵医大産婦人科事件から、最もセンセーショナルな福島事件。お金だけでなく、医師の人権までも踏みにじられる事態となった時、医師は、自然科学の法則に従っていられなくなり、社会制度の方に従うようになる。すなわち、法や裁判に基づく医療となる。特に提訴の理由、刑事訴追の理由、そして判決が自然科学との間で乖離が大きいものほど、医師が法、判決、社会制度に無理矢理合わせなければならず、患者さんの健康のためには、矛盾が拡大することになる。それが JBM である。
» 割箸事件
» 医師の刑事処分
» 慈恵医大産婦人科事件
» 産婦人科医不当逮捕事件
» 新宮心筋炎事件
» ガリレオ裁判

はたして、それは国民の健康、福祉に資するものになるのだろうか。但木敬一検事総長は、2006 年 9 月 13 日、検察長官会同の席上、「医療過誤・飛行機事故などはこれまで被害者の利益を考えて刑事責任の追及を行ってきたが、国民や社会全体の利益の観点に立って、原因究明や事故防止のためにどういう枠組がいいのか検討すべき時期に来ている」と訓示したという。検察トップは、この矛盾に気付いているのだ。
» 逆風 / 付帯私訴と厳罰
» 2006.9.13 検察庁の重罰化 ( 重要な追記あり ) ( 元検弁護士のつぶやき )

JBM は、それ自体、医療資源の縮小であり、医師が現場から立ち去る積極的な理由となる。すなわち、医療崩壊を加速する因子である。

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以上の 1. - 4. について考えてみて、医療崩壊の最も根源的な要因は、私は 3. で触れた人の心だと思う。医療が身の回りにありふれたものとなり、人々が医療を粗末にした結果なのだ。

では、医療崩壊はどこまで進むか。人々が医療を大切にしなければと思い直せるところまで、医療が崩壊し、人々の手に届かないものにならなければならないだろう。

そのターニングポイントは、イギリス型崩壊からアメリカ型崩壊に代わるときにある。そこで経済界が主導権を握ったらアメリカ型崩壊へ行く。人々が私心を抑えて、程々をわきまえて我慢をし、互助の精神と人に感謝する心を持つことができたら、相互扶助の社会保障制度としての医療が、いわゆる北欧型として、再生する可能性がある。ただし、その北欧型医療は、粗末に扱うことができない、少し手の届きにくいものになるだろうし ( アクセスの制限 )、クォリティは今より落ちるだろう。しかも法制度、社会制度を整備しなければならない前提条件はたくさんある。

まず、医師がその良心に従って誠心誠意職務に邁進できる法的バックグラウンドが必要である。例えば、医療版事故調査委員会とか、海事と同様に医療事故専門の審判を第一審にするなどがまず必要ではないかと考える。

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参考資料

医療崩壊の元凶資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2007/05/post_9738.html

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追記 2007.6.27

このブログ記事が引用されているものを見つけた。

実態を知らない人が好きなことを言っていることに問題はないのだが、医師をコンビニの商品と同じように大量生産大量消費したいと思っている人が少なからずいらっしゃる様だ。

労働力の大量生産大量消費は、今、派遣業界がやっている方向である。これを言っている人は、格差社会に反対しているつもりの様で、反対にいわゆる格差を拡大する方向の考え方なのに気付いていない。

医師不足問題は深刻だが、私は医療崩壊の元凶の大きな部分に、医療資源の無駄遣いがあると思う。無駄遣いが平気な人には、いくらたくさんの「商品」を与えても無駄遣いがひどくなるだけだ。

---------- 以下引用 ----------

こういうのを見ると、医師養成にかかる費用は700万なのに、私立はなんであんなに意味もなく高いのだろうと思います。
http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/09/__9966.html

いい教育するためとありますが、普通の家庭からすればもっとローコストにしてよって感じじゃないのでしょうか。

厚生労働省も医師の勤務実態は過酷なのに、医師不足じゃなく偏在してるだけなんて、よく言えたもんだと思います。

人口が自然減なら医師不足問題もほっときゃなくなるとでも思ってるんでしょうか。高齢化社会なのに。

市場の原理を考えても、医師の数を増やせば、それだけ低価格化も含めた競争がおき、人件費は減らせると思うんですけどね。

---------- 以上引用 -----------

自分の記事を引用して頂いてあり難いのだが .....

道標主人 | 2007-03-22 13:01 | JBM・医事法制, 医師叩き, 医療、社会保障, 医療崩壊 | | コメント (19) | トラックバック (7) | Top

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コメント

ご指摘の通りですな。
厚生官僚の驕りとマスコミを使った医者バッシングには吐き気がしますよ。
莫迦らしいから、もう辞めましょってなことになりますね。

さらに言えば、赤ひげなんぞは唾棄すべき人間で、中産階級からは金をかっぱいでいたわけだし、ヒポクラテスなんぞは結石は手を出さないと神かけて誓っているわけですわ。
http://blog.livedoor.jp/ikarusuyo/archives/50487329.html
つまりは、結石の体外衝撃波治療なんて否定してるわけでしょ。

先人を祭り上げるのは止してもらいたいもんだ。

投稿 鬼瓦権三 | 2007/04/29 12:37:02

すばらしくまとまったご意見です。
ぜひ、いろいろなブログなどにトラックバックして、多くの人の目にふれさせてあげてください。

投稿 ひろ | 2007/05/03 21:18:27

鬼瓦権三様、ひろ様、コメント有り難うございます。

いつまでこのブログやこのような活動を続けることができるか、
という不安もありますので、
簡単にですが、まとめておいて残せることは残しておこうと思います。

投稿 道標主人 | 2007/05/04 8:51:48

始めまして。
非常にまとまりのある考察を頂きありがとうございます。
いろいろ参考にさせて頂きたいと思います。

投稿 doctor-d | 2007/05/16 16:48:31

札幌の江原です。現在、肘の手術で入院中。

内科医さんが、自分が患者になって思ったことが患者の傲慢さだったとのこと。まさに、そのとおりと思います。

救急車を有料化する試みが東京で始まりますが、時間外救急診療も有料化(小児科は乳幼児医療費助成でほぼ無料)すれば、受診は減るでしょう。

たばこを1000円にしたら、9割が禁煙するなどという記事がありましたし、やはり、経済的なペナルティーもコンビニ受診に対しては必要だと思います。

投稿 江原朗 | 2007/05/24 9:44:50

江原朗先生

こんばんは

私の浅薄な脳で愚考しますに、万人に公平な価値基準は何か。それが医療を含めたこれからの社会のキーワードではないかと思い、思考を重ねているところです。

昔の家村社会の共同体の規範、倫理や社会道徳といった規範、こういうものでは社会の規律たり得なくなって、最後に残るものは法と金。

程よい曖昧さで仲良く暮らしてきた日本社会、医師と患者の関係・距離の程よさ、曖昧さが無くなって、法と金が医師と患者の間をつなぐ規範になっていくのかも知れません。

投稿 道標主人 | 2007/05/25 0:21:42

江原です。本日退院します。法とお金が人々を支配するとのことですが、法とお金が信用できる世の中はいい国です。
敗戦時には、満州では紙幣は紙切れになり、無法地帯となったはずです。法というお題目が効力を有して、紙幣という紙切れが物品との交換手段として通用する社会はすばらしいと思います。
逆に、場の空気で主張ができないとか、慣例で人が縛り付けられる社会よりも、場合によってはいい社会かもしれません。
つまらない反論ですみません。

投稿 江原朗 | 2007/05/25 11:36:34

江原先生
ご快癒 ( と申し上げてよいのでしょうか )、おめでとうございます。

法と金が信用できる、と申しますか、法と金だけでも信用できる、あるいは法と金しか信用できないとも申しましょうか。

日本は、程よい曖昧さと家・村・地域の共同体、阿吽の呼吸といったものが医師と患者の間にあった、少し前までのよき時代には戻れないと思います。医学と社会制度の間の曖昧さ、医師と患者の関係の中での曖昧さを後から法で裁き金で解決する社会になりつつあるのです。

医師の労働環境からしましたら、曖昧さ故に搾取されていた、コスト・アクセス・クオリティを医師の労働コストの削減で並立させていた訳ですから、曖昧さを排除することが望ましく、医療安全の観点からもそれが必要でしょう。

法と金の社会の最先端である米国は、移民・異文化が混合した社会だから、民主主義、契約社会が発達したのだと思いますが、日本は米国のすべてをまねをする必要はないのに、米国に追従、それどころか、属国化しようとしています。

望むと望まないに関わらず、医療の現場も契約社会になっていくでしょうが、それでも日常の医療の現場では、曖昧さが残されるのが日本人だと思います。しかし、曖昧さを残すことは、医師にとりましては、地雷を敷設するようなものかも知れませんね。

投稿 道標主人 | 2007/05/26 22:28:03

江原の書き込みで管理人さんにご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。
今後とも、医療の環境整備を進めてまいりましょう。

投稿 江原朗 | 2007/05/27 11:01:05

江原先生
これからも鋭いご意見をお願いします m(_ _)m

投稿 道標主人 | 2007/05/27 23:10:35

政府のスタンスが変わらなければ、絶対に変わりませんよね。
私も医療は、贅沢品ではなく、社会保障だと思っています。

医師不足とかに関しても、マスコミがきちんとした数字を理解して。
それできちんと国民に報道して。
それで、国民の意識が変わって、選挙が近づけば政治家も考えざるを得ないかな、って思って医務のですが。
なかなか難しいですね、実際。

投稿 Dr. I | 2007/05/29 23:39:35

Dr. I 先生
コメント有り難うございます。

政治、すなわち、私が逆らうことのできない流れと感じるものが変わるためには、国民の大多数が変わるか、カリスマ為政者が出るか、2 大政党制になって政権交代を繰り返すかなどの条件を考えるのですが、いずれも難しそうです。

医療は、病苦で困ったときにしか、その存在を実体視できません。大多数の人には、どうでもいいことなのです。空気と水と安全はただと日本人が感じている、その安全の部分が内政では社会保障、その柱の一つが医療なのですけどね。

選挙になったら政治家は選挙対策を考えますけど、過ぎ去ったら利権にならないものはどうでもよくなります。

しかも、選挙前に政治家が掲げる医療対策は、今回の参議院選挙を前にした与党のものもですが、医師の労働力搾取を根底にしています。その対策は、選挙後に法制度となり、医療安全、労働安全、労働衛生など無視した日本の安くて使い捨ての医療が残るだけなのです。医師の交代制をと言っている別の舌で医療費削減も言っているのですから。

> なかなか難しいですね、実際。

ホント、いろんな意味でそう思います。

投稿 道標主人 | 2007/05/30 20:38:11

はじめまして。2ちゃんに、先生のURLがあまりにも何度もコピペされているので、ここに来ました。しかし、情報量が多すぎてとまどっています。読んでほしいエントリーの順位とか、ありましたら教えてくださいますか。

投稿 ななつのひとつ | 2007/07/16 17:33:31

ななつのひとつ様
ご来訪、コメント有り難うございます。

当方のどの記事が 2ch のどこに掲載されているのか、私はよくは把握しておりませんのです。2ch に転載された方が皆様の目に触れさせたいと望むことと異なってしまうとは思いますが、私が最近、皆様にご覧頂きたいと思う記事を二つ、挙げさせて頂きます。

一つはここ、医療崩壊の元凶
http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2007/03/post_a86b_1.html

もう一つは現在のトッブにある、75 歳を迎えられるみなさまへ
http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2007/06/75_d2b5.html

投稿 道標主人 | 2007/07/16 20:14:13

患者を治療せず永遠に食い物に・・

医療が経済と化し医師のモラルが破綻

医師の崩壊が目に見える様になってきましたね

投稿 くまさん | 2008/04/17 5:52:20

本質をずばりと突いたエントリーですね!
世界的にみて過酷で低賃金な労働環境で今までやれてきたのは
臨床医は患者さんの感謝を糧にしてきたからです
その糧が失われた今、どうなっているか・・・
報道されているとおりの状態です

投稿 通りがかりの呼吸器内科医 | 2008/04/26 10:54:25

はじめまして。
医療崩壊に関した記事を自分のブログで書きたくて、資料を探していて貴ブログに辿り着きました。
色々と参考にさせて頂きます。有難う御座いました。

投稿 mizzie | 2008/06/26 21:58:55

mizzie 様

ご来訪有り難うございました。
古い資料ばかりなのとリンクが切れているところがあったりしますが、
よろしければご参照ください。

投稿 道標主人 | 2008/06/27 12:18:16

>世界に誇れる日本の医療とそれを支えて来た私たち医師
これはすこし言いすぎではないでしょうか。WHOの2000年のレポートにもある通り、日本は皆保険・平均寿命・乳児死亡率の3点で世界に誇るHealth Systemを確かに持っておりますが、患者の尊厳・患者中心の医療という点では他先進国にやや遅れをとっており、我々医療関係者が謙虚に受け止めるべきところもまだまだあるように思います。最近の風潮を見ていると、医療関係者も、患者も、厚労省もお互い謙虚さを失ってる気が致します。どうにかお互い謙虚さを取り戻す事はできないものなのでしょうか。

投稿 | 2008/07/03 5:32:58

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